大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 昭和26年(う)600号 判決

弁護人の控訴趣意第一点(適法な証拠調手続を経ない書面を証拠に供した違法)について。

原判決は、本件犯罪事実認定の証拠として、検察官提出の松尾貞一、林スギ各作成にかかる顛末書及び司法巡査に対する宮崎躯野子、松岡七治、行村イマ子の各第一回供述調書(検第二号乃至第六号)を挙示しているのであつて、原審公判調書の記載によれば、原審においては、右各書面につき証拠調をなすに当り、論旨指摘の如くこれを被告人に展示したのみで、朗読の手続を経ていないことが明白である。しかし右各書面は、いずれもその存在又は存在の態様が特に証拠とされるものでなく、主としてその書面の意義すなわち記載内容が証拠とされるものと認むべきであるから、刑事訴訟法第三〇五条にいう証拠書類として、その証拠調の方式は朗読の方法によるべきであり、従つてこの点において原審における前記証拠調の方式は適法でないという外なく、しかも右瑕疵は、たとえ被告人側より異議の申立がなかつたとしても、到底治癒されるものではないと解すべきであるから、結局原判決は適法な証拠調手続を経ない書面を証拠に供した違法あるを免れず、そして原判決挙示の証拠中前記各書面の外には、原判示犯罪事実の大部分につき、被告人の犯行を裏書すべき資料は存しないことになるから、右の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるというべく、論旨は理由がある。なお、原判決は行村イマ子作成の顛末書を他の証拠と綜合して本件犯罪事実認定の資料に供しているのであるが原審公判調書によると、右顛末書については、原審においてその証拠調をした事跡が全く認められないから、この点においても、原審の訴訟手続は違法であつて、右の違法は判決に影響を及ぼすものと認めるのが相当であるから、原判決は破棄を免れない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!